最高裁判決、6月1日に 長澤運輸労契法20条裁判

4月20日、最高裁判所が長澤運輸事件の弁論を開き、6月1日(金)16:00を判決日に指定しました。

新聞・テレビも大きく報道
長澤運輸事件は連帯ユニオンの組合員3人がおこした裁判です。「おなじ仕事なのに定年後再雇用を理由にした大幅な賃下げはおかしい」というのが内容です。

一審の東京地裁は組合員の全面勝利判決を下しました(2016年5月)。会社が控訴した二審の東京高裁は、「定年後の賃下げは広く行われており、社会的に容認されている」という逆転敗訴判決を下したのです(2016年11月)。

しかし、東京高裁は「社会的に容認されている」ことの合理的な根拠を示さず、独断と偏見に満ちたこの判決の誤りは明白。最高裁が弁論を開くのは、この高裁判決を見直すことを意味するものです。新聞やテレビも大きく報道しました。

鈴木三成さんが堂々と意見陳述
この日の弁論では、弁護団の意見陳述につづき、組合員の鈴木三成さんが法廷で堂々と意見陳述。労働実態をふまえた公正な判決を下してほしいと訴えました。

意見陳述の全文は以下の通りです。

また、弁論開始にあたっての最高裁前事前集会の様子は下記で視聴できます。

https://youtu.be/BZ9q5tcOJf4

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意見陳述

上告人の鈴木三成です。上告人の山口修、大山幸男、私の3人を代表して、意見を申し述べます。

私たちの仕事はセメント運送です。バラ車とよばれるタンクローリー型の大型トラックにセメントを積み込んで、関東一円の建設現場や生コン工場に運ぶ仕事を、毎日2回から3回くりかえします。トラックは10トン、14トン、15トン、トレーラーなどがあり、いずれも車体は大きく長いので、運転技術には熟練が必要です。私はゴールド免許で、この仕事を足かけ35年つづけてきました。

私が裁判官のみなさまに第1に訴えたいのは、私たちの仕事は定年前も定年後もなにひとつ変わっていない、それなのに賃金だけが大幅に減らされているということです。私が乗務する担当車両は定年となった日も、再雇用となった翌日からも、まったく同じです。運搬回数も同じ、ひと月の労働時間、年間の労働日数も、定年前とまったく同じ。定年前の正社員運転手とくらべても、なにひとつ変わったところはありません。しかし、再雇用となった翌日から賃金が大幅に下がり、入社1年目の人より低くなりました。

毎月決まって支給される手当がいくつもカットされましたが、とくに影響が大きいのは、大型車両の乗務に対する手当、8万5000円の「職務給」が全額カットされたことです。その結果、残業単価が定年前は1時間あたり1800円前後だったのに、再雇用になってからは1100円ほどと、およそ3分の2に下がりました。定年前の正社員と同じ時間だけ残業しても、残業代の総額は3分の2に減ります。私たち運転手の賃金は残業依存型なので、残業単価が下がるとダメージはとても大きいものがあります。夏冬の一時金も一円も支払われなくなりました。

私の年収は、通勤費を除くと、定年前が約500万円でした。再雇用になってからは370万円前後です。定年前も、定年後も、私の家族が減ったわけではないので、生活はとても苦しくなりました。東京高裁の判決は、仕事が同じであっても、定年後の賃下げは「社会的に容認されている」という、まったく乱暴なことを言っていますが、定年したら、同じ仕事をしていても生活を切り詰めろ、定年したら、お盆休みや正月の支度もする必要はないということでしょうか。とても納得できるものではありません。

第2に訴えたいのは、長澤運輸が、再雇用者の賃金を大幅に減らして浮かしたお金を元手に、外食ビジネスという、会社の本業とはまったく無縁の新規事業に、多額の資金をつぎ込んでいることです。

再雇用者一人あたり150万円程度。長澤運輸では再雇用者がつねに7人~8人いたので、会社は、1年でおよそ1000万円、5年働かせれば5000万円もの資金を、黙っていても浮かせることができるのです。

運転手には同じ仕事をさせながら、再雇用だという理由で労せずして手に入れた資金でこうした新規事業に手を出す。私たちは、こうした企業の経営手法は社会正義に反するものだと考えています。

第3に、私たちは労働組合に所属しているので、再雇用条件は、会社と労働組合の団体交渉で決めてほしいと、長澤運輸にくりかえし申し入れてきました。しかし、会社は、会社が決めた条件を受け入れなければ再雇用しないという高圧的な態度を、いまでもとりつづけています。

東京都労働委員会が昨年12月、会社のこうした態度は、不誠実団交の不当労働行為にあたる、社長がみずから出席して、誠実に交渉に応じるよう命じました。しかし、長澤運輸は中央労働委員会に再審査を申し立て、態度を改めません。

最後に、労働実態をまったく無視し、定年後の賃下げはガマンしろといわんばかりの高裁判決には、私たちは強い憤りを感じています。最高裁がその誤りを正し、公正な判決を下してくださるようお願いします。ありがとうございました。