共同声明のよびかけ人がコメントを寄稿

5月1日に発表された著名なジャーナリストらの共同声明が各界に波紋を広げている。よびかけ人のうち、香山リカさん、斎藤貴男さん、鎌田慧さんらがコメントを寄稿してくれた。

香山 リカ(精神科医)

ひとの命とこころと人権を守る精神科医として、私は人間を根底から傷つける「差別」が少しでもなくなるよう、これまでもさまざまな場所で発言をしたり著作で訴えたりしてきました。その中で、いまの日本には組織的に差別を煽動しようとする悪質な人たちがいることにも気づきました。そして今回、業者団体である広域協がそんな人物と手を組み、労働運動をつぶすために活動しようとしていることを知り、心の底から驚き、恐怖と憤りを覚えます。どうか自分たちが何をしようとしているかに気づき、愚かなことをするのはやめてください。またこの問題を多くの人たちにも知っていただきたいです。みんなで労働とその場にいる労働者を守り、差別のない社会を目指しましょう。

 

斎藤 貴男(ジャーナリスト)

来るところまで来てしまった。業者団体が差別暴力主義者の集団を使って組合潰しに興じる。かつて経営と暴力団の癒着が横行していた時代の再現、という以上の愚劣と退廃を感じざるを得ない。もはやネット右翼の巣窟に成り果てた安倍政権の下では必然的な帰結ではあるのだろう。
こんなやり方が万が一にも罷り通っていくようなことがあれば、いずれ確実に経済社会の全体に広げられていく。つまり日本は地獄となる。したがって当然、放置しておくことは許されない。私は共同声明の趣旨に深く賛同し、共闘することを誓うものである。

 

鎌田 慧(ルポライター)

労働組合の活動は労働者の権利である。労働者の生命と生活は、労働組合によって辛うじて擁護される。労働者の権利を認めない社会は、人間の権利を認めない社会であり、暗黒の社会である。労働者の社会的活動を認めない社会は、民主社会ではない。
しかし、労働運動に暴力団が介入し、破壊しようとした歴史はさほど古いものではない。福岡県の三井三池炭鉱争議では、60年3月、ピケットラインにたっていた久保清さん(32歳)が、暴力団員によって刺殺された。そのあとも、南大阪で地域の労働運動の中心になっていた、全金・田中機械の大和田委員長が暴漢に襲われ、東京山谷でも労働運動家や映画監督が、右翼に刺殺されている。
いままた、関西生コン労働者の運動に敵対する、右翼、暴力団の攻撃がはじまっている。これらは反社会的行動であり、犯罪であり、けっして無視できない行為である。地域の民主主義のためにも、この闘争を支持します。

 

宮里 邦雄(弁護士)

労働運動へのレイシスト集団の介入、事業者団体によるレイシスト集団を使っての労働運動の抑圧、きわめて悪質な組合つぶしです。
1960年代、三井三池争議をはじめ、いくつかの労働争議に使用者が暴力団を導入して争議つぶしを図ったことが想起されますが、レイシスト集団の介入は、労働運動憎しの思想的背景があるだけに、より悪質といえます。
誇張と虚偽を交えて扇動する言動、事実よりも感情に訴える言論、民族差別・排外主義的言論が世界中で拡がりつつあります。
「悪質な労働運動つぶしを許すな」の声をあげ、ヘイト集団とこれを利用する事業者に対する厳しい社会的批判の輪を拡げ、労働者の団結する権利、そして労働運動を守り抜こうではありませんか。

 

藤本 泰成(フォーラム平和・人権・環境 共同代表)

大阪広域生コンクリート協同組合は、その理念に「日本最大・日本初の協同組合としての社会的責任を果たすべく、以下の4つを理念として掲げ」としています。事業協同組合は、中小企業協同組合法に基づいて組織され「 公正な経済活動の機会を確保し、もつてその自主的な経済活動を促進し、且つ、その経済的地位の向上を図ることを目的とする」とされています。
そのような組織が、ヘイトスピーチを繰り返す反社会的集団のリーダーである瀬戸幸広の「活動を全面的に応援していく所存」とホームページで紹介している。そして「組織犯罪対策本部」なるものを組織して、瀬戸弘幸の活動に街宣車を提供し労働組合つぶしの暴力的活動まで応援している。それだけで、この事業組合は反社会的組織です。

 

木下 武男 労働社会学者(元昭和女子大学教授)

関西生コン支部は力をつけ、飛躍しようとしているときに権力から弾圧される。今回も2010年の長期ストライキ、昨年末のスト、いずれも支部だけでなく、生コン関連労組との共闘のもとでストを決行した。さらに業種別に労働者を結集し、業界と集団交渉をするという「関生方式」を全国化する取り組みを広げていた。
今回登場した極右レイシスト集団は、抑圧されている者が権利を主張する時にその者たちを攻撃するとの特質をもっている。生コン支部だけでなく、労働者の団結権や争議権そのものへの攻撃とみなければならない。また、経営者団体からこれほどまで忌み嫌われている「関生方式」を多くの労働組合が受けとめ、広げていくことが反撃の有効な方向だと思われる。

 

斉藤 日出治(大阪労働学校・アソシエ学長)

資本の暴力とレイシストの暴力が結託する、これは資本主義の末期的症状の現われと言えます。一方で、資本の攻撃が労働者を生活が成り立たないような状況に追いやり、経済の破局的危機を深化させています。他方で、レイシズムはその労働者の苦悩を他民族に対する攻撃的暴力へと転じて、大衆を戦争へと総動員していく。そのような動きのもっとも先鋭的な現象が、広域協とレイシスト集団の結託として現在たちあらわれています。連帯ユニオンと協同組合の反撃は、この結託を打ち破ることによって、資本主義に代わる連帯と協同にもとづく社会を創造する展望を切り開く闘いであることを肝に銘じようではありませんか。